本流 アマゴ毛鉤

本流 アマゴ毛鉤

鮎毛鉤の試行錯誤が面白すぎて
35℃越えが普通の天気の中
顔も手も腕も艶々の真っ赤(笑)

流石に渓流が恋しくなり先ずは毛鉤を巻いてみる

気になっていた昔の金針
鬼印 都型 金針 9号
前出の吉村アマゴほどでは無いにせよ
針先が非常に短い掛かり優先の針型にヒネリ入り

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鬼印 都型 金針 9号

油紙では無く銀紙に包まれている

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本流 アマゴ毛鉤

花入(各色)
先玉附き
下巻きのシケ糸(ライトオリーブ)が濡れると色が出る様に
胴は山繭(ナチュラル)を薄く巻く
リブはワイヤーをツイスト
蓑毛はスペックルドバジャーハックルやハニーダンにミディアム・ダン

カエシが強すぎるのでダイヤモンド砥石で削り取る手間も
これだけ個性的な鈎を使う愉しみに比べたらほんの僅かな手間
・・・カエシが強すぎると差しさわりが有り過ぎます

これをカワネズミ胴と金胡麻(スペックルドバジャー)の組み合わせ
・・・芯黒先黒の斑入り
花入をクラレットフロス
極小サイズの先玉(金)
リブをツイスト・シルバー・ワイヤー
胴は先巻をベージュ色・元巻きを銀鼠色
・・・極細身に巻きます

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本流 アマゴ毛鉤 金胡麻・カワネズミ胴

“Kebari” pattern about 100 years ago
Of course, I’m using even now

以下爺の戯言 ———————————

「温故知新」
・・・今、望まれるテンカラ毛鉤

何も無い各地方の山間僻地で独自に生まれた幻・・・では無い
・・・これについては拙ブログで紹介済み

鎖国時代以前の西洋毛鉤の影響を受けた毛鉤
その後の欧米文化吸収時代の明治に再度影響された毛鉤を背景に
あくまでも、日本独自の進化を遂げた毛鉤にその出生を求めた
「温故知新」
・・・今様テンカラ毛鉤

対象魚は岩魚・山女魚・アマゴ・虹鱒・ブラウン・川鱒
想定する渓は源流域から渓流域
・・・地域によっては海が見える渓も有る

過去には考えられなかった材料は有るし
・・・勿論、今では手に入らない素材も多い

ウーリーバッカーやGBヘッド等をテンカラ釣りに使うだけで
革新とか改革とかと宣う軽薄さは勘弁して欲しい
その程度なら過去の日本の毛鉤パターンにも概出済み
・・・たかだか100年程前の記述すら忘却の彼方の現状

旧来の日光テンカラに逆さ毛鉤?・・・云々も有るけれど
過去の釣雑誌なりテンカラ釣りの本を見れば判る事
・・・5~60年程前の本であれば露呈する話

道具も無く「手だけで巻く毛鉤」とかは笑止千万
・・・その当時なら、誰でもが行ってきた事

毛鉤は何でも良いなんて判り切った事
毛鉤への拘りは渓魚に対する畏敬と道具に対する矜持の顕れ
・・・毛鉤作りの一番大事な愉しみ

釣雑誌が喧伝するテンカラ毛鉤云々は問題外
日本古来の毛鉤釣り文化が根底にあるテンカラ毛鉤は素晴らしい
それを踏まえての今様テンカラ毛鉤・・・愉しみの極致

モグラの尻尾 毛鉤

モグラの尻尾 毛鉤

米国のテンカラフォーラム仲間からの問い合わせ
「過去のブログ記事で面白い記述が有るがこれは?」

その記事元は農文協様出版の
「宮本常一とあるいた昭和の日本」
・・・
民俗学者の宮本常一氏が主宰した近畿日本ツーリスト株式会社
日本観光文化研究所が昭和42年から昭和63年まで発刊
戦前、戦後の日本の農山漁村の文化を現地で取材し纏めた本

宮本常一氏の旅学 「自分の目で内側からみることが大切」

真剣に物をみていけばいくほど、わからないことが増えてくるのですが、
わかったと思い込むのではなくて、わからないことを確かめて、
明らかにしていく、それが大切なことです・・・紹介文より抜粋

テンカラ毛鉤についてもその謎解きが愉しい
地域に根付いた土着の毛鉤は実際に使われていた毛鉤
だからこそ
蜂頭毛鉤をはじめとする時間の経過で埋もれた毛鉤達にも会える
(当推量で捏造された毛鉤達ではない)

本題のモグラの尻尾毛鉤
静岡県の大井川上流の山村地域に有る田代という集落で使われていた
生のまま鈎に刺して乾燥させ山女魚(アマゴ)釣りに使った毛鉤

田代集落・・・大井川最上流部に有る集落
田代ダム周辺は近年、リニア鉄道で再注目を浴びているが過去より問題の多い場所
大井川水系は中部電力管理であるが田代ダムのみ東京電力唯一の水力発電ダム
水返せ運動等に見られる様に取水で下流の流れを止めて「川枯れ」を起こす
・・・当地域は「アマゴ」をヤマメと呼ぶ

モグラの尻尾とは

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モグラの尻尾

2㎝程度 質感はスクイレルテールよりはラビットファーに近い

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モグラの尻尾 近接

生のまま刺して乾燥させるとある・・・濡れれば外れる?
心配無用、尻尾には中に骨が有る・・・きっちりと締まって外れない!
考えてみれば尻尾は関節の連続・・・膠の塊

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モグラの尻尾 毛鉤

本物は餌針に鈎素付きでしょうが蛇口を付けてみました

毛足・形状共そのまま鈎に刺せば使えるサイズ
一つの閃きと使って見る大胆さ(笑)

以下爺の戯言 —————————————————

先ずはご訪問されている皆様と仲間に感謝申し上げます

折よく出版された「宮本常一とあるいた昭和の日本」全25巻
・・・民俗学者の宮本常一氏没後30周年を迎え再出版された記念版の存在

日本の仲間や海外テンカラフォーラム仲間の真摯な探求心に触れるたびに
自身の知識の少なさと好奇心の低下を感じています
確かに自分で使う毛鉤なんて年間でも5~6本程度
それもボロボロになるまで変えもしない
釣行先も変わらなければ立ち位置も変わらず
もしかすれば掛ける魚も変わらない・・・爺になりました(笑)

漠然としたテンカラ毛鉤に対する疑問が皆様の紹介により解けています
自分が毛鉤を教わった爺様達は皆様、石のシャッポを被られておりますので
確認のしようが有りませんが教わった事は誰かに伝えなければ伝承ではありません
本来は仲間内で認め合った者がその責を負うのでしょう
形では無くその内側の「何故」が判ればそれが伝承だと思います
毛鉤材料も「何故」それを使うかが判ってこその伝承毛鉤です

宮本氏の言葉「自分の目で内側からみることが大切」は勿論ですが
本来は
「真剣に物をみていけばいくほど、わからないことが増えてくるのですが、
わかったと思い込むのではなくて、わからないことを確かめて、
明らかにしていく、それが大切なことです」・・・紹介文より抜粋

幻とか秘儀とかで終わらせず皆様のお力添えを頂けることで
テンカラ毛鉤の謎が解けていきます
それを紹介出来る事は感謝しか私にはありません

「ありがとうございます。」

R.Y 様
コピー贋作の件ですが
日本の毛鉤の場合、100年程前の毛鉤は完全に忘却の彼方です
実例としても、60年程前に紹介された逆さ毛鉤は

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逆さ毛鉤の紹介者

その当時でも岐阜県益田川地域で使われていただけですが
何時の間にやら全国各地で古くから使われていたとする、毛鉤になりました
それだけでなく、そこに個人名まで付けて海外に紹介する厚顔さです
少しでもオリジナルなら良いのですが正体は初期型富士流逆さ毛鉤の色違い
機を見るに敏たる才覚の持ち主はどの世界にも・・・(笑)

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初期型富士流逆さ毛鉤 真似

剣羽根毛鉤も同じく巻き方すら知らずただ巻いて有るだけ(逆巻きすら有りました)
拙ブログで詳しく巻き方を紹介しましたら、そのまま後追い掲載されました
丈夫に巻けるでは無く、綺麗に巻けるとかの頓珍漢の説明になりましたし
剣羽根一枚で4つの剣羽根毛鉤が巻けるとした説明は当初、笑われました
その後、剣羽根の巻き過ぎは魚の出が悪くなると誰かに指導されたらしく
大人しくはなりました・・・ただ、程度の悪さには呆れました(笑)

山繭胴毛鉤も同じく後追い掲載されましたが
それは湯センで処理して解しやすくすると説明が付きました
確かに絹糸としてなら、お湯で茹でますが山繭胴として使うなら
本来はそのまま解してゆきます
・・・虫の匂いまでダビングすると教わっていましたから
一番大事な濡れると締まる繭としての持って生まれた性質に
言及された方は今だにいらっしゃらない様に感じています

ゼンマイ胴も同じで下巻きが云々の説明も
チャドウィック№477と性質は似ているとする説明も
当初は理解されず只々、笑われていたものですが此の頃は理解された様です

日光毛鉤なり日光テンカラ?
その昔は日光にテンカラの呼称が有ったのか不思議ですが
其の自称する継承者が逆さ毛鉤・・・不思議な話です
どうせなら日光毛鉤の銘品、ゴロッチョ毛鉤・金胡麻・銀胡麻を・・・

・・・書き出すとキリが無いので止めますが
釣雑誌が持て囃す有名人でもその程度です

フライの場合なら
拙ブログで紹介済みですが1600年代の英国の原書は電子化されて無料で閲覧できます
今なら、200年前でも300年前でも各国の個人ブログに詳しく説明されております
(手前味噌的な日本のブログよりは出典も明らかにされております)
たかだか5~60年程度の個人の釣り人生で積み重ねられる経験なんて僅かな物です
パラシュートタイプ・CDC・ビーズフライ・キールタイプ・ウィグル・・・
オストリッチフライ等、数百年前から先人達が紹介済みです
時間の経過で忘れられただけですから個人のちょっとした閃きなど比較にもなりません
・・・これは自分にとっても諌めです

今迄、出典元がはっきり出来ずに説明できなかった物が今なら出来ます
これも皆様のご指導とご教授のお陰です

シンプルな毛鉤は特に感じますが形だけ真似てみても本意とずれます
だからこそ「伝承毛鉤」は貴重な存在です
手前味噌で巻いたバケ針も本当の「埼玉バケ針」とは違います
一番大事な所が違いますがそこはF師匠様の領分ですから説明できません

伝承毛鉤を紹介されている方々は多いですがその出典元は同一の本からが多いです
その本に書かれている事が全てでそれ以外は存在すらしないとされているのが現実です
それで金を得る玄人なら素人で田舎の水呑百姓に指摘されない程度は・・・(笑)

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伝承毛鉤のネタ本

地元の秋山郷毛鉤すら使う蓑毛は芯黒(ファーネス)と紹介されていますが
それ以前の爺様達からは芯黒先黒が一番で、芯黒先黒の白毛の斑付きが最良と
聞いておりました
これは他地域の古来からの岩魚毛鉤と同じで驚いた記憶が有ります

それと同時に
この近辺の中部山岳地帯で使われていた古くからの毛鉤の共通点
私個人が見知っている範囲はたかが知れてはいますが
・・・それでも辺境地は他県と接する地域が多いのです(笑)
原点とも言える岩魚毛鉤の存在・・・一時「〇の毛鉤」・・・
その原点を言及した方がいらっしゃらないのが却って不思議ですね

これも1960年代初頭の安曇追分で作られていた輸出用フライが
Kebari and Fly 自身の原風景ですから爺の戯言と笑って下さい

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1960年代初頭の安曇追分で作られていた輸出用フライ

付記として「秘儀 白孔雀胴毛鉤」・・・(笑)

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秘儀 白孔雀胴毛鉤

一定の条件下で釣れます・・・
本来ならばその正体が判っていても手に入れる事が難しい素材で作られた毛鉤が
本当の「幻の毛鉤」かもしれません
鮎毛鉤に使われていた「朱鷺の羽根」は今や幻ですし、蝮の内側の皮を使った毛鉤も・・・
決して逃げ口上とか誤魔化すための「幻」では無いと私は感じています

日本の水産関係の古書も電子化が進んでいます
一例として国立研究開発法人 水産研究・教育機構の図書資料デジタルアーカイブが有ります
日本最古とされる釣り専門書「何羨録」(かせんろく)をはじめ漁具等の写真資料も豊富です

国立研究開発法人 水産研究・教育機構